木材になりたい

ミュージカルの感想と妄想と持論をひたすら垂れ流す

HEDWIG AND ANGRY INCH  Special Showを見てきた

 

 

Hedwig and the Angry Inchという作品をご存じだろうか。

私がこの作品に出会ったのはたしか高校一年生の頃である。

いつだって出会いは偶然。月に2回通っていた近所の図書館に、それは置いてあった。

 

置いた人は本当にどうかしていると今でも思う。

 

PTAが怒りだして撤去されても悲しいので、多分私の記憶違いで、出会いは近所のツタヤということにしておこう。そう、近所のツタヤです。

 

当時、ミュージカルといえば美女と野獣オペラ座の怪人、最近のお気に入りはムーラン・ルージュという認識をしていた私には衝撃的な出会いだった。

当時はまだドラァグクイーンという言葉すら知らなかった。

何故最初にパッケージを見て怯まなかったのか。始まった瞬間、明らかに女装(あくまで当時のままの感想です)をした男の人が歌っているのを見て思った。

 

あ、これ親に見られちゃいけないやつだ。

 

そんな感じで、エロ本をこっそり見る男子中学生さながら、家族が不在の時にこっそりと見たことを今でも覚えている。

(のちに作品が進むについれ美しさが増してくヘドウィグに魅了されるのだけど。)

 

自分の片割れを探す男でも女でもないヘドウィグ。

中二病の卒業証書が見えてきて、恋愛にも興味深々の高校1年生に響かないわけがなかった。

いや別にこの作品=中二病とか言いたいわけではない。

むしろ、この作品は誰もが考えたことのある普遍的で共感できるテーマが描かれていると思う。

 

そうじゃなければ、アラサーの女子会で「私の運命の人はどこにいるのか(直訳)」なんて話題が盛り上がるわけがない。

 

人生で一度たりともそういうことを考えたことがない人だけが石を投げなさい。

 

マズロー欲求階層でも所属と愛の欲求や承認欲求があるように、愛されたい誰かに自分を受け入れ認めてもらいたいという感情は人間の普遍的なものだと思います。

そして、ヘドウィグのアングリーインチは形は違えど誰もが持っているものじゃないかなと思うわけです。

 

話が脱線しすぎた。

ストーリーについてはとりあえず、見てくださいとしか言えない。

今までほとんど手に入らなかったDVDが、なんと10.18に再販みたいです。

しかも1429円(税別)この機会にぜひ!

 

 

そんなHedwig and the Angry InchのJohn Cameron Mitchellがヘドウィグ役で日本に来る!!!

という衝撃的なニュースを見て、最初につぶやいた言葉がこちらである。

 

 

 

金でなんとかしようとした報いか、残念ながら3公演とも抽選落ちた日本死ね

 

 

そんなときに3公演とも当選したという幸運の女神が微笑みまくっているフォロイーさんの有難いお誘いを受けて、無事にジョン・キャメロン・ミッチェルを生で拝むことができた。

1963年生まれということは…54歳。

奇しくも(?)うちの父親と同じ年である。

ありえない、私の知っている54歳と違う。明らかに違う。美しすぎる。

彼の周りだけ時間の流れが違うんじゃないかと思うくらい美しすぎる54歳がそこにいた。

パフォーマンス中に疲れたよー的なジェスチャーを所々みせるけれど、完全にフリだけでその後の動きのキレが全然落ちない。むしろあざとい。あざとさしかない。

 

内容は、Special Showとはよく言ったもので、ダイジェスト版ヘドウィグといった感じだった。

たしか中村中はイツァーク役だと聞いていたがヘドウィグの歌以外のパートや母親、そしてトミー・ノーシスとすべての役を演じていた。

(歌以外)中村中の一人ヘドウィグ・アンド・ザ・アングリーインチと言っても差支えがないくらい大活躍しており、あのプロモーションで本当に良かったのか中村さん謙虚すぎやしないかと思ったレベルである。

 

演出で特に残念だったのは、あの演出にしてしまうと最後にヘドウィグがウィッグをイツァークに渡すシーンがかすれてしまうんだよな。

自由を手にするには代償が必要と言われ女になり、結果『アングリーインチ』が残ってしまったヘドウィグが、同じく一緒についてくるためにイツァークに禁じた『ウィッグをかぶる』という行為を認めるという行動はあの作品の一番大事な部分だと思うんですよ。

 

いや、あなた今まで何回もウィッグつけてましたやん。

(イツァークの時ではないけれど。)

 

となってしまうのが否めないというか。

 

あといろんなところで噂には聞いていたが字幕は完全に死んでいた。

 

しかし、ジョン・キャメロン・ミッチェルの歌は最高だった。

映画のままのヘドウィグがそこに存在して涙しそうにすらなった。

歌だけではなく、動きやちょっとしたしぐさですらヘドウィグだった。

家帰って映画も見たし、サントラ聞いたけど、ショーで見た姿や声がそっくりそのまま存在していてイメージを壊すことなく復習ができた。

未だにイメージを壊したくなくてFNLのサントラが聞けない私には有難すぎる話である。

それだけで本当に見る価値はあったと思うし、実際会場は死ぬほど盛り上がっていた。

 そしてあの難しい役をこなした中村中さんも本当にすごいと思う。

 

そして直後の感想がこれ

 

 

多分あのショーは位置づけ的に、Hedwig and the Angry Inchが好きで何度も見ている人のための脳内補完を要するダイジェストショーなのだと思う。

だけど、プロモーションの仕方が「オリジナルキャストのHedwig and the Angry Inchが見れるよ!」的な感じだったから、不満に思う人も出てきたんだろうなってとても残念に思う。

客層見る限り、多分ヘドウィグという作品が本当に好きなんだろうなっていう人がいっぱいいたから「ヘドウィグの曲をジョン・キャメロン・ミッチェルが歌うよ!あとダイジェストで話の流れも紹介するよ!」的なプロモーションでも十分人が集まったと思うんですよ。

有名なミュージカル俳優のコンサートだってミュージカルじゃないけど人集まってるわけじゃないですか。なぜそれじゃだめだったの。

本人が見れて、好きな作品の歌が聞けるかも!ってだけでファンは集まると思うんですよね。だからプロモーションの仕方だけが本当に残念で。

 

プロモーションの会議で「ヘドウィグ?え、それは人気な作品なわけ?曲だけで本当に客集まるの?」「じゃあ、こういう宣伝文句にして人集めましょう。」的なやりとりがなされたんじゃないかと邪推してしまうくらいには残念。

 

本当に感動したし、とても満足のいく時間だったがゆえにそれだけが気になってしまった。

しかし、今回の企画には感謝でしかない。むむむ、その矛盾が苦しい。

 

そして気合い入りすぎてうっかり間違えて1時間前に入場列に並んでしまったのだけど、そのおかげで買えたTシャツが可愛かったのでとても満足している。

後ろがヘドウィグの髪型になってるよー!かわいいー!

入場開始7分で完売とかいうツイートみてびびる。

やっぱファン層厚いんだからプロモーションの仕方を…